役員・従業員の自宅を社宅にするとなぜ節税になるのか。

役員・従業員の自宅を社宅にすると節税できると聞いたことがある方もいらっしゃると思います。

今回は、社宅制度でなぜ節税できるのか、どんな準備が必要なのかという概要を整理してみたいと思います。

目次

1 社宅とは

「社宅」というと、何となく「大企業が整備しているもので、中小企業は関係ないのでは?」というような先入観があるかもしれません。しかし、会社が所有している物件を社宅にする、というだけではなく、会社の名義で借り上げた物件に、役員や社員の居住するという場合も社宅に含まれます。

ここでポイントなのが、あくまで「会社名義で」借り上げる、ということ。

役員や社員が個人名義で契約したものに対して会社が家賃補助を出す場合には、それは社宅とはなりませんので、ご注意ください。

以降は、会社が借り上げた社宅に役員や従業員が居住するという前提で必要な準備等について記載してみます。

2 社宅として節税するためにはどんな準備が必要なのか

(1)規程の整備

まずは、社宅規程の整備などのルールをあらかじめ整備しましょう。

(1)会社名義で住宅を借り上げる

前述の通り、まずは社宅としようとする住宅を会社名義で借り上げることが必要です。場合によっては、現在社員や役員が住んでいる賃貸物件の契約を変更して、契約者を本人から会社名義に変更する、という方法でもOKです。

(2)家賃のうち、入居する役員や社員が負担する金額を決定する

社宅についてですが、分かりやすく書いてしまうと、全額を会社の経費とすることは認められていなくて、家賃の一部を入居する役員や社員が負担させなければならないことになっています。

では、いくら入居者が負担しなければならないのか、ということになるのですが、その金額の算定の仕方には国税庁が定める方法により算出します。

簡単に説明すると、市役所等で固定資産税課税証明書というものを入手し、物件の固定資産税の課税標準額を元に計算する方法です。具体的な計算方法は、役員の場合と、社員の場合で異なります。それぞれ国税庁の以下のHPに掲載されています。

国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問) 役員に社宅などを貸したとき

国税庁HP タックスアンサー(よくある税の質問) 使用人に社宅などを貸したとき

②固定資産税課税の課税標準額が分からない場合は

①の方法は、固定資産税課税証明書を入手したうえで、負担額を計算するといったように、多少の手間がかかります。そのため、ざっくり家賃の50%を入居者の負担額とする方法が一般的です。

ただし、①と②を比較した場合、①の方法により算出した金額の方が小さくなることが一般的です。つまり、①の方法で算出した負担額の方が、入居者負担の家賃小さくなる=会社負担の家賃が大きくなる=会社の経費となる金額が大きくなる、ということになります。

先日お客様の役員社宅の役員負担分の計算を行ってみたのですが、その際には①の方法で計算した役員負担額が家賃の約10%程度となりました。

このように、①と②の方法では入居者負担の金額が大きく異なってきますので、可能な限り①の方法で入居者負担額を計算することをおすすめします。

3 社宅にするとなぜ節税になるのか

最後になってしまいましたが、簡単になぜ社宅が節税対策になるのかについて、以下の前提で、①役員や社員などの入居者側から見たメリット、②会社側から見たメリット、に分けて考えてみます。

<前提>

基本給20万円の社員に対して、家賃10万円の社宅を提供する。社員の家賃負担額は5万円とする。

①従業員側から見たメリット

社員側から見ると、家賃10万円の住宅に5万円の家賃で住めることになります。一方、社宅ではなく、社員本人が契約した住居に対して会社から家賃補助を5万円行うとなると、この5万円についてはその社員の所得税の課税対象となります。

つまり、社宅とすることで、この5万円が所得税の課税対象にならないので、社員側から見るととてもお得ということになります。

②会社側から見たメリット

会社側から見ると、この従業員側に関して支払う金額は給与20万円、家賃5万円(家賃10万円ー従業員から受け取る家賃負担分5万円)の、合計25万円。

仮に、社宅ではなくや家賃補助として5万円を支出したとしても、会社としては経費となる金額は変わりませんが、社宅とすることで、社員の所得税の課税対象が小さくなるので、従業員にとってはメリットとなります。

その結果、会社としては以下のようなメリットも見込めると思います。

・社員の離職防止

・会社の近くに住んでもらうことによる通勤時間の短縮、仕事の効率向上、通勤手当の削減

3 まとめ

以上のように、社宅をうまく活用することによって、節税をすることができます。

ただし、例えば役員社宅について、社会通念上、一般に貸与されている程度の住宅と認められない豪華な社宅については役員社宅の取り扱いが認められないことになっているなど、留意すべき事項や細かな要件もありますので、検討の際には注意が必要です。

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